2018年12月11日 「養育費の受給率向上について」一般質問しました!
養育費の受給率向上について
国民民主党・県政クラブ県議団の堤かなめです。養育費の受給率向上について、知事に5点質問いたします。
養育費は、子どもを育て教育するために必要な費用のことで、子どもの健やかな成長に必要不可欠なものです。海外の研究によれば、養育費の受け取りは、子どもの言語能力などの学習成果を向上させること[1]、また、子どもの健康状態を改善することなどが分かっています[2]。
そのため、先進諸国の多くでは、行政が主体となり、子どもと別居している親から養育費を受給できるよう支援しています。国立国会図書館の調査によれば、アメリカでは、行方不明になった親を行政が捜索したり、養育費の滞納者に運転免許の停止を行う制度があります。イギリスでは、給料から強制的に天引きするほか、不払いの場合、最長6週間の収監も可能です。フランスでは、税金の徴収官が養育費の取り立てを行うということです。また、北欧諸国では、国が養育費の立て替え払いすることなどにより、受給率はほぼ100%となっています。
一方、日本では、養育費に関する国や行政の関与が極めて限定的であり、実際に養育費を受け取っている割合は、先進諸国の中で最低レベルで、25%にも満たない状況にあります。
そこで1点目に、知事は、養育費の重要性についてどのように認識されているのかお聞かせください。
【回答】
養育費は、子どもが経済的・社会的に自立するまでに要する衣食住や教育、医療などに必要な経費であり、子どもの健やかな成長にとって、極めて重要なものであると認識している。
養育費の支払いは、子どもに対して、別れた親が自分と同じ水準の生活を保障するという強い義務だとされている。
2点目に、本県のひとり親世帯における養育費の取り決めや受給の状況についてお聞きします。
【回答】
本県が一昨年度に実施した「ひとり親世帯等実態調査の結果では、養育費の取り決めをしている母子世帯の割合は44.0%、父子世帯は23.5%となっている。
また、現在、養育費を受給している割合は、母子世帯が23.8%、父子世帯が3.3%となっており、極めて低い状況にある。
3点目に、2011年の民法改正を機に、翌年度から、離婚届出書に養育費(および面会交流)の取り決めの有無のチェック欄が設けられ、さらに本年10月、法務局の法制審議会において、行政のより積極的な関与を可能とする要綱案がまとめられたと聞いていますが、これら養育費に関する国の近年の取組みについて、知事はどのように評価しているのかお聞きします。
【回答】
平成23年の民法改正により、協議離婚の際に、養育費と面会交流を取り決めることが明文化され、平成24年4月から、離婚届に、取り決めの有無をチェックする欄が設けられた。
しかしながら、これは取り決めを義務付けるものではなく、取り決めがなくても離婚届が受理されることから、必ずしも養育費の確保に効果を発揮しているとは言い難い状況にある。
また、現在、法務省の法制審議会においては、養育費の不払いで強制執行を行う際に、裁判所を通じて、相手方の銀行口座や預金残高、不動産などの情報を把握する新たな制度が検討されている。
この制度が実現すれば、相手方の財産状況が不明であっても、裁判所を通じて得た情報で、差し押さえが可能となることから、申立人による調査等の負担が軽減され、養育費の確保についての実効性がたかまるものと考えている。
4点目に、本県における養育費相談の状況についてです。
本県では、2003年に、「ひとり親サポートセンター」を春日市に、2008年には、その支所を飯塚と久留米に設置し、養育費に関する相談事業を行っており、今年度は、新規事業として「養育費110番」と「弁護士相談クーポン」の取組みも開始しています。
そこで、これらのセンターにおける相談件数や相談内容についてお聞きします。
【回答】
本県では、これまで、ひとり親サポートセンターにおいて、「元夫から養育費が支払われずに困っている」、「養育費について取り決めをせずに離婚したが、どうしたらいいか」といった相談に対応してきており、昨年度の相談件数は99件となっている。
今年度からは、新たに、弁護士による年4の集中電話相談「養育費110番」や、相談者の都合の良い時間と場所で弁護士相談が無料で受けられる「弁護士相談クーポン」を配布し、より相談しやすい体制としたところである。
「養育費110番」については、これまで2回実施し、45件の相談があり、「弁護士相談クーポン」は11月末現在で25枚配布している。
5点目に、県が作成した養育費に関する啓発動画の活用についてです。
本県では、養育費への理解を広く啓発するため、2018年8月に動画を作成し、NHKのテレビ番組でも紹介されたと聞いています。日本では、養育費に関する社会的関心が低いことが指摘されており、このような本県の取組みは全国的に見ても画期的なものであると高く評価するものですが、今後、養育費に関する関心を高めたり「養育費110番」などについて広く周知するため、どのようにこの動画を活用するのかお聞きします。
以上、子どもたちへの知事の温かい思いに満ちたご答弁を期待し、降壇させていただきます。どうぞ宜しくお願いいたします。
【回答】
養育費の受給率向上を図るためには、まずは、県民の皆さまに養育費の取り決めの重要性について、しっていただく必要がある。
このなめ、今回、初めて、養育費に関する啓発動画「離れていてもパパとママ」を作成し、県内すべての市町村にDVDを配布するとともに、県や市町村、県母子寡婦福祉連合会のホームページで配信することにより、ひとり親サポートセンターへの相談を促しているところである。
今後は、ひとり親サポートセンターや男女共同参画センターで実施する研修会やイベント、市町村が行う児童扶養手当支給手続の会場において、この動画を活用した啓発を行うとともに、県政出前講座なども利用しながら、養育費の重要性について、県民の皆さまに広く周知してまいる。
【堤かなめより要望】
知事よりご答弁いただきました。
1点要望をさせていただきます。
知事は、法制審議会の案に盛り込まれた、養育費の不払いで強制執行を行う際に、預貯金の残高などの財産情報を取得できる新しい制度について「実効性が高まる」との認識を示されました。たしかに一定の効果はあると考えますが、この制度を使うには、強制執行に関する取り決めが定められた公正証書があること、あるいは、家庭裁判所の調停や審判もしくは確定した判決があることなど、実際に利用するには、かなり高いハードルがあります。また、そもそも、預貯金をもたない、事前に預貯金を引き出して強制執行を逃れるといった場合も含めると、現実には、どの程度有効性があるのか、疑問をもたざるを得ません。
そのような中、兵庫県明石市の泉房穂市長は、先月、「明石市養育費立替パイロット事業」をスタートしました。これは、市が業務委託した保証会社が、養育費の取り決めをしたひとり親家庭との間で養育費保証契約を結び、養育費の不払いがあった場合には、同社がひとり親家庭に対し養育費の不払い分を立て替えて支払い、別居する親に対し立て替え分を催促して回収するものです。初回の保証料は、上限5万円で市が負担します。
この明石市の事業は、試行的な実施とはいえ、注目に値するものであると考えます。ひとり親家庭の子どもたちの多くがおかれている経済的に厳しい状況を打開するため、本県としても、この事業の展開に注視するとともに、国の取組みを待つだけでなく、本県としても独自に、より有効な養育費の受給率向上策を考案し試行することなどもご検討いただきますよう要望し、私の質問を終わります。
[1] Allen, B.D., Nunley, J.M., and Seals, A. J. (2011). The Effect of
Joint-Child-Custody Legislation on the Child-Support Receipt of Single Mothers.
Journal of Family and Economic Issues, (32), 124-139.
[2] Baughman, A. R. (2014). The Impact of Child Support on Child
Health. Review of Economics of Household, 1-23.
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