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2017年3月

2017年3月22日 (水)

2017年3月22日予算特別委員会「性犯罪の撲滅について」

性犯罪の撲滅について[1]

 

性犯罪の撲滅について質問します。委員長、警察本部に、【資料 福岡県の性犯罪の現状】の作成をお願いしておりますので、お取り計らいのほどどうぞ宜しくお願いいたします。

 

「crime_statistics.pdf」をダウンロード

 

 

 

資料の説明をお願いします

 

 

 

【答1】 

 

〇平成28年(2016年)中、認知件数435件(前年比―141件)、検挙件数は315件(前年比79件)、検挙率は72.4%(前年比4.0ポイント)であります。

 

○認知件数は、前年と比べ約3割減少したものの、人口10万人当たりで見てみますと7年連続で全国ワースト2位で推移しております。

 

 

 

ご説明にありましたように、認知件数が毎年400件を超え、発生率が7年連続全国ワースト2位。これだけ多くの被害にあわれた方々のことを考えると、とにかく一刻も早くなんとかしなくてはいけないと思います。しかし、一方で、ややもすれば潜在化してしまいかねない犯罪が、県警察のより積極的な取り組み、被害者に寄り添った支援などのご努力の結果として、犯罪が顕在化し認知件数を押し上げているという面もあるかと思います。

 

そこで、お聞きします。昨年(平成28年)、性犯罪の認知件数が減少していますが、その要因は何であると考えておられますでしょうか?

 

 

 

【答2】

 

○昨年、性犯罪が減少した要因につきましては、例年多発傾向にある夏季において、性犯罪が多発する駅周辺での広報活動や自動車警ら隊等による夜間の重点警戒などの予防対策を特に強化したこと、平成27年度(2015年度)の重点施策で製作した「性犯罪防止DVD」を活用した参加型の防犯教育やツイッターをはじめとした情報発信などにより、若い世代に対する啓発が浸透してきたこと、などが挙げられると考えております。

 

 

 

 様々な取組みの成果が実ってきているということかと思います。しかし、言うまでもありませんが、性犯罪は、被害者の尊厳を踏みにじる極めて悪質かつ卑劣な犯罪であります。また、性犯罪は一般に累犯性が高く、検挙されなかった場合、再び新たな重大な犯罪を引き起こす危険性をはらんでいます。

 

そこで、検挙率が3年連続上昇していることは、評価に値すると思いますが、さらに、検挙率を高めるためにどのように取り組んでいかれるのかお聞きします?

 

 

 

【答3】

 

○被疑者を検挙するためには、事件認知時における捜査員の大量投入による被疑者の徹底した捜索と証拠資料の収集などの初動捜査。防犯カメラ映像の解析とDNA鑑定など各種の捜査手法を駆使した継続捜査などが重要と考えております。県警察といたしましては、引き続き、これらの捜査を徹底し、被疑者の検挙と事件の解決に努めてまいります。

 

 

 

 引き続き、徹底した捜査を期待しております。

 

 被害者は、被害に遭ったことにより著しい精神的打撃を受けておられるかと思います。そのような被害者の心のケアのためにも、県警察が開設しているミズ・リリーフ・ラインは大変重要な機関であると思いますが、ミズ・リリーフ・ラインは、どのような体制でどのような活動を行っているのか、お聞かせください。

 

 

 

【答3】

 

○ミズ・リリーフ・ラインには、臨床心理士の資格をもつ女性心理カウンセラー3人を配置しており、犯罪の被害にあわれた方や、そのご家族、ご遺族等の精神的被害の回復をサポートするために、面接や電話によるカウンセリングなどを行っております。

 

 

 

 では、ミズ・リリーフ・ラインでは、性犯罪の被害者からの相談に対して、具体的にどのような対応を行っているのでしょうか?

 

 

 

【答4】

 

○性犯罪の被害にあわれた方については、特に精神的、身体的なダメージが計り知れないことから、専門的知識をもつ者が被害者の立場に立って対応することが必要であります。ミズ・リリーフ・ラインでは、女性心理カウンセラーが被害者の悩みや不安を引き出すことで精神的被害の回復をサポートするなど、被害者に寄り添ったカウンセリングを行っています。

 

○また、被害者の心身の状態をみて、①医療機関への早期受診、②被害後に起こりうる不眠症や無気力感などへの対応、③被害申告の手続きなどについて助言を行っております。

 

○このほか、法律相談や医療機関への付き添いの必要があれば、「性暴力被害者支援センター・ふくおか」などの相談窓口を教示しております。

 

 

 

ご説明をお聞きし、配慮の行き届いた対応がされているということがわかります。また、県警察と「性暴力被害者支援センター・ふくおか」との連携もさらに緊密になってきているように思います。来年度からは、新たな施策として、「性暴力被害者支援センター・ふくおか」において、性犯罪証拠資料の採取を行うようになると聞いていますが、県警察では、この施策をどのように捉え、どのように取り組んでいかれるのかお聞きします。

 

 

 

【答6】

 

○性犯罪の被害にあわれた方は、精神的ダメージを受けている上に、羞恥心、自責の念、捜査への不安などから被害の届出を躊躇することが考えられます。センターでの取組みにより採取され、警察で保管する証拠資料は、後日被害者が被害の届出を決意した場合に活用されることとなり、これが引いては事件の解決に繋がるものと考えております。県警察といたしましては、センターとの連携により証拠資料の適切な保管・管理に万全を期し、これまで潜在化していた事件の検挙に向けて取り組んでまいります。

 

 

 

検挙率のさらなる向上を期待しております。

 

また、新聞報道によりますと、警察庁は、来年度から、全国共通の4桁の性犯罪被害相談ダイヤルを開設する方針を固めた、とのことです。必要な人が必要な時にすぐに相談できるよう、児童虐待の189(いちはやく)、消費者ホットライン188(いやや)のような、短くて覚えやすい、全国共通番号の設置を求めてつづけてまいりましたので、大変うれしく思っております。この新しい相談ダイヤルが早期に実現するよう、県警察としても、ぜひ国に働きかけていただきたく要望させていただきます。

 

そして、実現の暁には、県警察として、万全の相談の受け入れ態勢を整え、県民の方々へ広く周知されますよう、お願いいたします。

 

最後に、性犯罪の撲滅に向けた決意をお聞かせください。

 

 

 

【答7】

 

○性犯罪は、「魂の殺人」といわれる極めて許しがたい凶悪な犯罪であります。県警察といたしましては、引き続き、若い世代を中心とした参加型の防犯教育の実施や防犯アプリ「みまもっち」の活用による情報発信など、予防対策を推進してまいります。また、事件が発生した時には、初動捜査の徹底とあらゆる捜査手法を駆使した検挙活動を行うとともに、被害にあわれた方にたいして適時適切な支援に努めるなど、組織一眼となって性犯罪の撲滅に強力に取り組んでまいります。

 

 

 

有難うございます。24時間体制で、県民の方々の安全・安心を守ってくださっている、県警察の皆さまに改めて感謝申し上げ、私の質問をおわります。

 

 

 

 



 

 

 

 

[1] 安田貴彦「警察の性犯罪被害者対策」『警察公論』(51.10)、1996年

 

 内山絢子「性犯罪の被害者の被害実態と加害者の社会的背景(上)(中)(下)」『警察時報』55(10)(11)(12)、2000年

 

 

 

 

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2017年3月17日予算特別委員会「女性研修の翼の継続について」

 まず「女性研修の翼」事業の背景である男女共同参画の現状についてお聞きし、それを踏まえ、「女性研修の翼」の継続について質問いたします。

福岡県は、2001年(平成13年)に「福岡県男女共同参画推進条例」を制定し男女が、互いにその人権を尊重しつつ責任も分かち合い、性別にかかわりなく、その個性と能力を十分に発揮することができる社会の実現に向け、「福岡県男女共同参画計画」を策定し、関連する施策を総合的、計画的に推進してきました。

そして昨年度、県は、男女共同参画の一層の推進を図るため、これまでの計画の成果、現状や課題、社会の新たな動きなどをふまえ、5年間を計画年度(平成28年度~平成32年度)とする、「第4次福岡県男女共同参画計画」を策定しています。 

しかし、このようなご努力にもかかわらず、男女共同参画の実現は、依然として厳しい状況にあると言わざるを得ません。

そこで、【資料1 日本、福岡県における男女共同参画の状況について】【資料2 福岡県女性海外研修事業「女性研修の翼」について】の作成を予め執行部に依頼しておりますので、委員長のお取り計らいのほど、どうぞ宜しくお願い致します。

【問1】資料1の説明をお願いします。

「gender_gap_index.pdf」をダウンロード

 

 

【答1】

〇日本は、今年144カ国中111位、前年は101位ということで、国際的にみても低い水準にある。

〇県や市町村の職員における女性の管理職への登用は、年々進んでおります。福岡県では、県総合計画に定めた「管理職に占める女性管理職の割合を平成28年度(2016年度)までに6%にする」という目標を2年前倒しで達成。また、県内事業所における管理職にしめる女性の割合も増加しており、平成25年度(2013)年度で、課長相当職以上が13.9%となっており、いずれも1割前後という状況。

 

ジェンダー・ギャップ指数とは、世界経済フォーラムが2006年以降毎年公表しているもので、「女性活躍」の掛け声とは裏腹に、我が国の男女格差は、縮まらず、2015年が101位、2016年が111位と、10位も順位が下がっているわけですね。

この10年、世界各国で「女性活躍」が急速に進んでいますが、日本ではそのスピードが極めて遅く、他の国に追い越されるという形で順位が下がっているのだと思います。

午前中、松下委員の少子化対策についての質疑がございました。世界的にみると、女性の就業率上昇にともない、いったんは出生率が下がるものの、女性管理職の増加、働き方改革、ワークライフバランスの進展など男女共同参画がさらに進展するにつれ出生率が回復する、という相関関係があると言われています。したがって、少子化対策という点からも男女共同参画は重要な施策であります。

しかしながら、本県でも、着実にじわじわと、女性管理職が増えてきているのは確かですが、そのスピードが遅すぎると言わざるをえません。

【問2】では、国が掲げている「202030」についてご説明ください

 

【答2】

〇「202030」とは、「社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%程度とする目標」のことです。2003年(平成15年)、国の男女共同参画本部において決定し、2010年(平成22年)、閣議決定されたもの。

 

そもそも、1985年にナイロビで開かれた世界女性会議では、各国で2000年までに、指導的地位の女性を30%とする、「200030」とされていました。日本の「202030」という目標は、この世界的な目標2000年から20年遅れの2020年を目標として設定したものなのです。ですから、この目標すら達成できないということにならないよう、県として、本気で取り組んでいただくことを要望しておきます。

【問3】では、ここで、福岡県海外研修事業「女性研修の翼」の目的と、概要、その実績について説明願います。

 

【答3】

○地域や企業等で積極的な活動を行っている女性を海外に派遣し、外国の各種制度、施設の視察、調査や、人との交流等を通して、国際的視野をもって活動できる人材を育成し、本県の男女共同参画推進に資することを目的としております。

○これまで689人の団員が参加されてまいりました。研修後、団員は、県や市町村審議会委員、市町村議会議員、企業の役員等の指導的立場にある役職に就かれ、様々な分野で活躍していただいています。

 

 団員のうち211人の複数回答でありますが、417人が、研修参加後新たに指導的地位についている、ということですね。私も、個人的に何人も「女性の翼」を契機に、活躍の幅を広げられた方を存じ上げています。素晴らしい成果を挙げている事業だと思います。

この「第4次福岡県男女共同参画計画」34ページには、「地域コミュニティの運営における男女共同参画の推進」の項目の下、主要な事業として、「福岡県女性海外研修事業『女性研修の翼』の実施」が明記されています。

【問4】したがって、この事業を中止するということはあり得ないと思いますが、いかがでしょうか?

 

【答4】

〇県においても、女性の人材育成は引き続き必要であると考えております。

〇今回見直しを行うのは、海外派遣という研修の手法についてです。

○この理由は、①第一に、昨今、国際的なテロの突発的な発生のため、団員の安全を確保すること、そして、②参加者の海外研修への視察先ニーズが多様化していること、また、③ライフスタイルの変化や多忙などで、研修に必要な日数の確保が困難となっていることで応募者の減少がみられることによるもの。

○そのため、国内研修により女性の人材育成事業を実施するものです。

○地域女性リーダー育成という事業目的を同じくする「女性研修の翼」の後継事業の平成29年度(来年度)予算をお願いしておるところです。

○また、研修名は「女性研修の翼」の後継事業であると判るようにくふうして参ります。

○今後も、しっかりと女性団体からのご意見を聞きながら事業を実施してまいります。

 

研修先が海外から国内に変更されるとはいえ、30年を超える歴史をもつ「女性研修の翼」として、実質的に継続されるということで理解いたしました。

使い古された言葉ではありますが、「百聞は一見に如かず」です。座学やグループワーク形式の研修も重要ですが、やはり現場に足を運ぶこと。現場で、DVや性暴力にあった方々の苦しみや悲しみ、ひとり親の方々のご苦労、法や制度のはざまにおかれ理不尽な思いをされている方々など、当事者の方々の声を直接お聞きしたり、このような人々に寄り添い、社会の矛盾を解決しようとする方々が懸命に地道に活動する拠点に身を置き、活動の内容や思いをお聞きすること、そういう実地研修が大切だと思います。

【問5】では、この事業の運営体制について教えてください

 

【答5】

〇この後継事業では、国内の研修においても、しっかりと成果が得られるよう、研修内容の充実を図ってまいりたいと考えております。そのため、実行委員会形式で様々なご意見をいただきながら運営を行うことを予定しております。

〇実行委員には、『ふくおか県「翼の会」』など地域の女性団体からも参画していただきたいと考えております。

 

 初期の「女性の翼」の団員で、今年度、その方の20歳の娘さんが、お母さんの勧めもあって、参加されたと聞いています。30年を超える歴史をもつ事業ならではのエピソードだと思いました。この若い団員の方は、地域で開催する「研修報告会」についてフェイスブックで発信するなど、積極的な活動をされているそうです。

また、団員のOGの皆さんが、自発的に、『ふくおか県「翼の会」』を結成しておられ、「福岡県男女共同参画センターあすばる」が主催するフォーラムにおいて、講演会などを実施されています。県は研修事業を多数実施しておられますが、修了生がこのような活発な活動を33年もの長きにわたって続けている例は他にほとんどなく、大変貴重な活動だと思います。

【問6】そこで、県は、この「翼の会」をどのように評価されているのかお聞きします。

 

【答6】

〇この「翼の会」は、女性研修の翼の海外研修から帰国後、男女共同参画の先進国で刺激をうけた体験や、得た知識を地域などで活かし、女性の地位向上と男女共同参画社会の実現に努めることを目的に団員OGの方たちが昭和63年(1988年)に自ら結成した団体であると承知しております。

〇県といたしましても、こうした会が結成されたことが、女性研修の翼の事業の大きな成果であると評価しております。

〇また、翼の会では、県内自治体へのアンケートや市町村との意見交換など、地域での男女共同参画を推進するための活動を活発に行っておられ、今後とも、このような翼の会の活動に期待をし、また応援してまいりたいと考えております。

 

では、部長にもお聞きしたいと思います。

【問7】「202030」の実現を目指し、実質的に「女性研修の翼」を継続し、地域の女性リーダーの育成にしっかりと取り組んでいただきたいと考えますが、いかがでしょうか。

 

【答7】

○あらゆる分野で活躍できる国際的視野をもった女性を人材育成していることは今後も大事であると認識しています。

○研修先を国内にするという手法の変更はありますが、今後も『ふくおか県「翼の会」』など地域の女性団体からもしっかりとご意見を聞きながら地域女性リーダー人材育成を実施してまいる所存でございます。

 

【要望】

部長の決意、しっかりと受け止めさせていただきました。

また、男女共同参画の推進を担っている県や市町村職員の意識を高めていくことも必要であると考えます。県は、この女性人材研修への県職員の派遣を行うとともに、市町村に対して職員の派遣を呼び掛けていただくよう要望しまして、私の質問を終わります。有難うございました。

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2017年3月17日 (金)

2017年3月16日予算特別委員会「水俣条約と水銀対策について」

 2期目になってこの2年、一般質問に立つ機会は減りましたが、政策審議会事務局長という役目を拝命し、代表質問づくりに携わらせていただき、幅広いテーマについて勉強させていただいております。ただ、一般質問をする機会が少なくなってしまいました。
 昨日は、予算特別委員会で以下のとおり、質問しました。(正式な議事録は、2,3か月後に県議会HPにアップされます。)
 

水俣条約(正式には「水銀に関する水俣条約」)と水銀対策につきまして、まず、グローバルな課題、日本の課題についてお聞きし、それを踏まえ、県や市町村の取組みについてお聞きしていきたいと思いますので、どうぞ宜しくお願い致します。

 

◎世界的に増加している水銀汚染[1]

 私自身最近知ったことなのですが、世界的に、地球規模で、水銀による環境汚染が広がっていると言われています。過去100年間に人間の活動による水銀の放出により、世界の海洋表層100メートル(海の表面から100メートル)の水銀量は2倍に増加しているとのことです。

水銀は、常温で液体である唯一の金属元素で、気化して蒸気となりやすいという珍しい性質をもっています。そのため、いったん環境に排出されると、大気中で国境を越えて移動して全世界を循環し、地球規模の環境汚染を引き起こすことになってしまいます。

近年では、かつての水俣病のような、工場などの特定の汚染源による健康被害だけでなく、環境中の水銀が食物連鎖によって、大型の魚介類などに高濃度で蓄積し、それを摂食することによる胎児への影響なども心配されるようになってきています。

「水銀に関する水俣条約」が採択された背景には、このように、水銀汚染が、地球規模で取り組まなければ解決が難しいグローバルな課題として認識されるようになったことがあります

 

◎水俣条約の概要について

 まず、この水俣条約についてですが、これは、水銀および水銀化合物の人為的排出から人の健康および環境を保護することを目的としており、2013年(平成25年)10月に採択され、50カ国が批准してから90日後に発効することとなっています。

 我が国は、昨年(平成28年、2016年)2月2日に、この水俣条約を締結していますが、本年2月3日現在での批准国は38カ国であり、発効には、あと12カ国の批准が必要です。

そこで、水俣条約では、どのような規制がされているのか、その概要をご説明ください。

 

【答1】

〇水俣条約の内容は、水銀の産出や貿易、製品等への利用、大気中への排出、廃棄などについて規制するものです。

〇水銀の貿易については、条約上で認められた用途のみに限定されます。

〇水銀使用製品については、2020年までに水銀を一定以上含有する電池、蛍光灯などの製造、輸出、輸入が禁止されます。

〇大気への排出については、石炭火力発電所や非鉄金属精錬施設等からの排出削減対策を実施することとされています。

〇廃棄については、環境上適正な管理が求められています。

 

◎水銀の輸出の制限について

 水銀による甚大な被害を経験した日本は、様々な規則を設けるとともに、行政機関・産業界・市民が一体となって水銀対策に取り組んできました。その結果、現在では、水銀利用量は、1964年のピークの0.5%に、排出量も大きく減少し、水銀管理に関しては世界でも優良国となりました。

しかし、その一方で、日本からの水銀の輸出量は、財務省貿易統計によると、2012年で世界第10位。しかも、2012年から2014年までは70トン程度だったものが、2015年は約102トン、2016年は約147トンと増加しています。

我が国は,水俣病の経験を踏まえ、国際社会において、水俣条約策定までの議論に積極的に貢献してきました。現在も引き続き、国際社会と協力しつつ、水銀汚染対策の強化をリードすべき立場にあることを考えると、このような日本からの水銀の輸出の現状には疑問を持たざるをえません。

そこで、日本からの輸出について、国はなんらかの制限をしていないのかお聞きします

 

【答2】

〇現時点では、水俣条約は発効していませんが、発効すると、日本からの輸出については、「外国為替及び外国貿易法(外為法)」により、水俣条約以上の規制を行うこととされています。

〇外為法により、水銀が一定量未満の電池や照明ランプ、試薬などを除き、水銀の輸出は全面的に原則禁止されることになります。

 

 輸出については、水俣条約が発効後、制限されるとのことですね。しかし、発効後でよいのかという疑問は残ります。

と言いますのも、世界的な水銀利用量は、国内外で減少傾向にあるものの、東アジア、東南アジアでの利用量が圧倒的に多く、用途としては、零細小規模な金の採掘が最も多くなっており、採掘業に従事する人々の健康がまず懸念されます。

さらに、日本から輸出された水銀が、適正に使用されず最終的に大気中へ排出され、回りまわって、福岡県、日本全体の環境を汚染し、県民の方々、私たち自身の健康に影響を与えかねないことも懸念されます。

水俣条約の発効を待たず、できるだけ早く、他の先進諸国並みの輸出制限をする必要があると思いますので、県としても、ぜひ国に働きかけていただくよう要望します。

 

いずれにしましても、輸出が制限されると、今まで輸出していた水銀は国内に留まることとなります。このため、水銀について、適切に対応するためには、しっかり安全に回収し、安全に処理していく必要があります。

そこで、まず、水銀使用製品の回収について伺います。

先ほど述べた通り、日本における水銀の使用量は減少しているものの、水銀使用製品は今も使用されていますし、これまで生産された水銀使用製品のすべてが完全に回収されたわけではありません。

このため、使用後の製品については、適正に回収する必要があるのではないかと思います。水銀使用製品の回収などについては、どのような規制があるのかお伺いします。

 

【答3】

〇水俣条約を的確かつ円滑に実施するため、平成27年(2015年)6月に「水銀による環境の汚染の防止に関する法律」、通称「水銀汚染防止法」が成立しました。

〇この「水銀汚染防止法」では、条約上の規定にはありませんが、水銀使用製品の適正な回収のための国、自治体等の努力義務が規定されています。

〇国は、市町村が水銀使用製品を適正に回収するために必要な技術的な助言その他の措置を講ずるよう努めなければならないとされています。(第10条)

〇また、市町村は、経済的社会的諸条件に応じて、廃棄された水銀使用製品を適正に回収するために必要な措置を講ずるよう努めなければならないとされています。(第17条)

 

◎県内市町村の水銀使用製品の回収状況について

 一昨年成立した水銀汚染防止法」により、市町村は、水銀使用製品を回収する努力義務が規定されたとのことであります。

それでは、水銀の回収については、昨年のこの委員会で高橋先生が質問されていますが、現在、県内市町村では、どのような水銀製品を、どのように回収しているのでしょうか?あらためてお聞きします。

また、家庭や医療機関に残されている水銀体温計や水銀血圧計などの回収も必要と思いますが、どのような対応がとられているのでしょうか

 

【答4】

〇県内では、57市町村が、蛍光灯、ボタン電池や体温計等について、いずれか、あるいは、いくつかを何らかの方法で回収、分別しています。

〇回収の方法としては、

 「ステーション回収」、これは資源ごみの回収日等に既存のごみステーション等に住民が分別して排出し、市町村が回収する方法です。

 それから、「拠点回収」、これは市町村の施設や市町村の依頼により家電量販店や薬局等に設置した回収容器に、住民が直接持ち込み、市町村が回収する方法

等により行われています。

〇また、市町村の直接的な回収ではありませんが、電気店や時計店等の販売店の店頭に回収容器を設置し、事業者によって回収を実施する「店頭回収」が行われています。

〇なお、家庭の体温計については、環境省のモデル事業により、薬局や市町村の庁舎の窓口等で回収促進事業が実施されています。

〇医療機関の水銀血圧計等について、国(環境省)が平成28年3月に「医療機関に退蔵されている水銀血圧計等回収マニュアル」を策定しています。

〇環境省によると、このマニュアルは、日本医師会を通じて、各都道府県の医師会に周知され、多くの医師会において回収事業が実施されています。

 

◎水銀使用製品から回収された水銀の処理について

 昨年、医療機関に向けた回収マニュアルが策定されるなど、水銀の回収が着実に動き出している、とのご説明だったかと思います。

それでは、次に、回収された水銀の処理についてですが、処理についてどのような規制があるのでしょうか?

 

【答5】

〇水銀使用製品から回収された水銀は、これまで輸出や水銀使用製品に再利用されていましたが、今後、水俣条約の発効により、使用用途が制限されるため、廃棄物として取り扱う必要性が生じることが想定されます。

〇水銀は、人への毒性が強い物質であり、水俣条約でも、廃棄にあたっては環境上適正な管理が求められています。

〇このため、昨年4月、廃棄物処理法が一部改正、施行され、水銀使用製品等から回収された排水銀は、特別管理一般廃棄物又は特別管理産業廃棄物に規定されました。

〇収集運搬については、平成28年(2016年)4月から、水銀が常温で液体であり、揮発するという特性から密閉容器の使用等が義務付けられ、処分については、平成29年(2017年)10月から、安定した化合物にし、更に固形化した上で処分することが義務付けられる予定であり、国において処分の基準が公布される予定となっています。

 

◎県としての取り組みについて

市町村が、水銀使用製品がきちんと安全に回収されること、そして回収した水銀を適正に安全に処理することが重要だと思います。

では、県は、これまで市町村等に対し、どのような取り組みを行ってきたのか、また、今後、どのような取り組みを行うのか、お聞きします。

 

【答6】

〇「水銀汚染防止法」において、市町村には、廃棄された水銀使用製品の適正な回収を行うよう努力義務が定められており、この規定については、平成28年(2016年)12月に施行されているところです。

〇県としては、これまで、家庭から排出される水銀使用製品の分別回収に関し、国(環境省)が策定した市町村向けのガイドラインや事例集について、情報提供を行うとともに、平成28年(2016年)6月に市町村担当者に説明を行うなど、その周知を図ってきました。

〇また、水銀廃棄物の適正処理については、昨年(平成28年)3月に策定した「福岡県廃棄物処理計画」にも記載しているところです。

〇水俣条約の趣旨からも、家庭や医療機関から排出される水銀使用製品を適正に回収することが重要であるため、今後も多くの市町村が回収に取り組み、適正に回収されるよう、住民への啓発など市町村と連携して取り組んでまいります。

〇また、水銀の処理については、これまでも廃棄物処理法に基づき指導等を行ってきたところですが、新たな基準が施行されれば、その周知を図るとともに、新たな基準に基づき適正処理が行われるよう指導を行ってまいります。

 

◎環境部長の決意

 水銀使用製品の回収に関しては、昨年12月に新聞で報道されたように、回収拠点が北九州市には約200カ所ありますが、福岡市には30カ所しかないなど、市町村によって取り組みに差があることは明らかです。このままでは、適正な回収が進まず、適正な処理がなされないのではないかと危惧しています。

 水銀使用製品を分別していない市町村がまだあることや、取り組みに差があるため、すべての市町村が、水銀使用製品の分別、回収に取り組むべきだと思います。

確かに、水銀使用製品の回収は市町村の責務ですが、県民の健康を守るため、県としても取り組んでいく必要があると思いますが、今後どのように取り組むのか、部長の決意をお聞きします。

 

【答7】

○水銀は、人の健康や環境に重大な影響を及ぼすことから、水銀使用製品の回収や廃棄物となった水銀の適正処理は、重要な課題と認識している。

○このため、まず入口となる市町村における水銀使用製品の回収については、国のガイドラインや事例集を活用して、市町村等による回収の取り組みが進むよう働きかけるとともに、県民や事業者に対しても、一層の、その内容の周知徹底を図ってまいる。

○また、水銀を廃棄物として処理する場合は、「廃棄物処理法」に基づき、保管から収集運搬、処分の過程において、環境への影響がでないよう事業者等に対し指導を行ってまいります。

 

部長、有難うございます。今後さらに水銀の回収が進み、適正な処分がきちんと行われることを期待しております。質問を終わります。

 

 

 


[1] 水銀に関する水俣条約の国内対応検討委員会『水銀に関する国内外の状況等について』平成26年(2014)3月、3頁

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