« 「インクルーシブ教育の推進について」質問しました。  | トップページ | 12月議会でも多言語サービスについて一般質問しました! »

2014年9月30日 (火)

9月議会も登壇しました!

内容は次のとおりです。長文ですがご笑覧くださいますと幸いです。(正式な議事録は県議会のHPに2~3カ月後にアップされます。)


今回も、当事者の方々、行政の方々、知人友人、先輩議員など多くの皆さんのご助言をいただきました。感謝いたします。有難うございました!


皆さま、おはようございます。民主党・県政クラブ県議団の堤かなめです。

 

1 女性活躍のための環境整備について

 

 はじめに、女性活躍のための環境整備について質問します。

本年4月、日本経済団体連合会(経団連)は『女性活躍アクション・プラン~企業競争力の向上と経済の持続的成長のために~』を発表し、参加企業に対して、女性活躍のための自主行動計画の策定を要請しました。8月1日現在、39社が計画を公表しています。

一方、小川知事が顧問を務められている「女性大活躍推進福岡県会議」が進める「女性活躍推進自主宣言登録企業」は、この1年ですでに100社を超えたということです。福岡は、全国でも「女性の活躍推進」の先頭を切って走っていると言ってもよいのではないでしょうか。

さて、この福岡県会議は活発な活動を展開しており、子育て環境整備に関する10項目からなる提言も行っています。昨年の6月議会におきまして、私も、女性の活躍推進とそのための環境整備について一般質問いたしましたので、この提言を読ませていただき、意を強くしたところです。指導的立場に女性が就くことは、組織の中の多様性を高めるためにも、働く女性の役割モデルを次世代の女性に示すためにも、大いに推進されるべきことは言うまでもありません。

そこで、小川知事に2点お聞きします。

1点目に、知事はこの子育て環境整備に関する提言をどのように受け止められたのでしょうか。

2点目に、この提言には、子育て中の働く男女が安心して働き続け、責任ある立場にもチャレンジできるよう、長時間勤務体質の改善や多様な勤務形態の導入などの働き方改革、学童期までを含んだきめ細かい支援や、子ども・子育て支援新制度の実現に向け必要な財源を確保して推進することなどの要望が、具体的に盛り込まれていますが、県はどのようにこれらの要望の実現に取り組まれるのか、お聞かせください。

 

【知事の答弁】

「子育て環境整備に向けた提言」の内容は、国・自治体・企業がそれぞれ役割分担しながら、取り組むべき課題を指摘した重要なものであると考える。提言にある「多様な勤務時間や働き方を考慮に入れた、学童期までを含んだきめ細かい子育て支援」については、待機児童解消に向けた保育所の整備に加え、延長保育、病児・病後児保育といった保育サービスの充実、また、学童期に対応するための放課後児童クラブの整備、さらに、それらを担う保育人材の確保と質の向上に取り組んでいる。

 また、「企業や団体による、従業員の子育てと仕事の両立がしやすい環境づくり」を進めるため、企業の経営者や管理職を対象に、部下の久慈と仕事の両立を支援する上梓、いわゆる「イクボス」になってもらうための企業向けセミナーの開催などを行っている。来年度に予定されている「子ども・子育て支援新制度の実施」に当たっては、必要となる財源について確実に確保されるよう、機会あるごとに国に対して要望を行ってきている。県としては、今後とも、国・市町村・企業と連携を十分に図りながら、子育て世代が活躍できる環境を充実させ、女性が輝く社会の実現に努めてまいる。

 

2 ひとり親家庭について

 

 次に、ひとり親家庭について質問します。

 

1)「女性の貧困」と母子家庭の現状

 

「女性の活躍推進」の裏で、「女性の貧困」が静かに深く進んでいます。今では、働く世代の単身女性の3分の1が、年収114万円未満の貧困状態となっているそうです。そのなかでも年々深刻な状況に陥っているのが、シングルマザー(母子家庭の母親)の方々です。小さな子どもを抱えた20代のシングルマザーのうち、なんと、およそ8割もの人々が、貧困状態に置かれています。

本年127日、NHK「クローズアップ現代[1]」で、『あしたが見えない~深刻化する“若年女性(若い女性)”の貧困~』という特集が放映されました。その中で、4歳と2歳の息子を育てている28歳の女性の事例が紹介されていました。この女性は、時給800円で働いていますが、精一杯働いても収入は月10万円ほどにしかなりません。母子家庭に支給される、およそ4万円の手当などを加えて、なんとか家計を維持しています。この母親の言葉です。

「食費をできるだけかけずに、うどん一玉を3人で食べたり、汁を多めに作って、汁で腹いっぱいにさせるっていうのはあります。」「精神的にも金銭的にも1人なので、自分にもしものことがあったらと、ふと思いますね。自分が倒れたら、(子どもが)2人とも餓死するんじゃないかとか考えますね。」

かつて「一杯のかけそば」が話題となったことがありましたが、いまこの日本で「一玉のうどん」を分け合わねばならない親子がいるということに衝撃を受けました。

世界的にみると、日本のシングルマザーは、「働いているのに貧困」「ワーキングプア―」であることが特徴的であるとされています。日本のシングルマザーは8割が働いており、他の先進国と比べると驚異的と言えるほど高い就業率なのですが[2]、貧困率もまた先進国の中で最も高い水準にあります。働いている母子世帯の貧困率は58%、約6割です。つまり、日本のシングルマザーの方々は、子どもを抱えながら懸命に働いているにもかかわらず、その頑張りに見合うだけの収入が得られていないという理不尽といえる現状にあるのです。

 その上、ある民間団体の調査によれば、「親族から経済的援助がある」というシングルマザーは12.6%、1割強でしかなく、9割近くの方が自分ひとりで子どもを育てているということになります。そのため、「子どもの教育費の支払いに困難を感じている」というシングルマザーも9割を占めています[3]

では、福岡県の状況はどうなのでしょうか。政令市と中核市を除く、本県の母子家庭の数は、およそ3万5千世帯。この5年で1割増加しています[4]

そこで、小川知事にお伺いします。本県の母子家庭の方々が置かれている現状について、知事としてどのような認識をおもちなのかお聞かせください。また知事は、県内各地を訪問し地域の皆さんと意見交換を行い、その結果を県政に反映する「知事のふるさと訪問」を積極的に行っておられますが、シングルマザーの方々から実際にお話を聞かれたことはあるのでしょうか。もしあるとすれば、その時のご感想などお聞かせください。

 

【知事の答弁】

 県では、関係団体との意見交換や定期的な調査により、実態と要望の把握に努めている。私自身も団体の役員とお会いして話を伺ったところ。平成23年度の実態調査によれば、母子家庭の4割以上が「収入がとても足りない」と回答するなど、経済的に苦しく、子育てや生活面での課題を数多く抱えていることが明らかとなった。県としては、不安を解消し、生活の安定と自立を実現できるよう、就業支援をはじめ、生活面や経済面での幅広い支援に取り組んでいるところである。

 

2)ひとり親家庭への支援強化

 

最後に、ひとり親家庭への支援強化についてです。

本県でも、シングルマザーの8割以上が何らかの仕事をしていますが、その半数が非正規雇用となっており、母子家庭の平均税込収入は236万円と、一般家庭の半分以下でしかありません[5]また、非正規も含めて働いているシングルマザーの8割もの方々が8時間以上働いています[6]ここ福岡でも、「働いているのに貧困」という現状にシングルマザーは置かれていると言わざるを得ません。

 本県では、2010年(平成22年)に「母子家庭及び寡婦自立促進計画」を定め、父子家庭も含めひとり親家庭の生活の安定と自立を促進し、子供の健やかな成長を図るため、「生活と子育ての支援」、「就業支援」、「経済的支援」、「保育サービスの充実」などの子育て支援に関する施策と合わせて、総合的に推進していく』としています。

 そこで、小川知事に4点お聞きします。

1点目に、ひとり親家庭の就業・自立支援についてです。本県では、保健福祉環境事務所に加え、母子家庭等就業・自立センターを2003年(平成15年)に開設し、生活支援から就業支援まで広く支援しています。また、県は、教育訓練を通じた母親の職業能力開発のために、母子家庭自立支援給付金事業を実施しています。

しかし、先に述べましたように、シングルマザーの8割以上が仕事をもっているなか、相談に出向いたり訓練を受けたりするのは、時間的にも経済的にも難しいのではないかと思われます。センターの利用や訓練の受講を促進するため、県はどのような対応をおこなっているのかお聞かせください。

 2点目に、養育費の確保についてお聞きします。2011年(平成23)に行われた全国母子世帯等調査によれば、養育費を受け取っている母親は全体のわずか2割(19.7%)に止まっており、福岡県の調査結果もほぼ同じ数値です。また、元夫からの養育費や仕送りは、母子世帯収入全体のわずか7%に過ぎません[7]。これらの数値は、諸外国に比べて極めて低いレベルに位置づけられます。

また、日本でもようやく2011年(平成23年)から、養育費について離婚届に記載することが民法で定められましたが、養育費を徴収するための強制力はありません。そのため、養育費の取決めがあっても、その一部しか受け取っていない人が7割(70.3%)もいるという調査結果[8]が報告されています。   

一方、米国、イギリスなど諸外国では、養育費の給与天引きなど、強制的に養育費を徴収するための手段が取られているとのことです。滞納者には免許停止やパスポート発行拒否など公権力が行使されている国もあります。我が国においても、養育費がきちんと受け取れる仕組みが整えば、養育費の取り決めをしないまま離婚する人も減ってくると思われます。

つきましては、食費や教育費など子どもの養育に必要な収入をひとり親が確保することは重要だと考えますが、養育費の確保に対して、県はどのような支援を行っているのか、お聞きします。

3点目に、これらの施策を含め、ひとり親家庭を支援する施策を総合的に見た場合どのように評価しているのか、これまでの施策の総合評価についてお聞かせください。

4点目に、本県の母子家庭及び寡婦自立促進計画」では、「必要な施策については国に提言を行う」と明記されていますが、これまでどのような提言を行ってきたのか、その結果、国の施策にどのように反映されたのかをお聞きします。

ひとり親の苦境は、子どもの貧困に直結し、もはや放置できない状況にあります。貧困とは、ただお金がない、ということだけを意味しません。貧困は、人々を社会から孤立させ、心と体の健康を悪化させ、若者の自立を困難にし、社会全体を不安定化させます[9]福岡県のすべての子どもたちの未来を明るくする明快な小川知事のご答弁を心から期待し、降壇させていただきます。どうぞ宜しくお願いいたします。

 

【知事の答弁】

 身近なところで相談を受けられるよう、飯塚市と久留米市に支所を設けたところである。また、本所、久留米支所で日曜日の相談窓口も開設している。こうした取組みに加え、平成26年度は3カ所で定期的な相談を実施している。また、9月からは、ハローワークの求人データの提供を受けることで、相談から職業紹介までの支援をワンストップで行うことが可能となった。就業支援講習会は、利用状況や求人の状況に応じ、メニューを見直している。また、受講促進のため、託児サービスを導入するとともに、夜間講習や通信講座を取り入れるなどの工夫を行っている。

 養育費の確保については、母子家庭等就業・自立支援センターに相談員を配置し、助言や支援機関の紹介を行っているところである。さらに、法律に関するアドバイスが必要な場合は、センター本所に加え、柳川市等でも弁護士による無料相談を行っている。

 ひとり親家庭を支援する施策の評価だが、県においては、就業支援、経済的支援、生活と子育て支援という、3本の柱による総合的な取組みを行っているところである。平成15年度からこれまでに、延べ2,200人を超える方の就職が実現。また、福祉資金貸付を利用して延べ1,900人以上の方が進学したところである。平成25年度から開始した学習支援については、170人の子どもたちを支援した。アンケートでも、全ての方が「参加させてよかった」と回答されるなど、高い評価をいただいている。今後とも、ひとり親家庭の生活の安定と自立を促進し、子どもの健やかな成長を図るため、総合的できめ細やかな取組みを進めてまいる。

 ひとり親家庭への支援策に関する国への提言についてです。県はこれまで、ひとり親家庭に対する医療費助成制度の創設、父子家庭への支援拡大、児童扶養手当制度の改善等の提言を行ってきた。その結果、父子家庭に対する支援の制度化や児童扶養手当と公的年金の併給制限の見直しが実現した。引き続き、ひとり親家庭の実態を踏まえた、より効果的な施策が実現されるよう、必要な提言を行ってまいる。

 

■要望

 知事よりご答弁いただきました。1点要望させていただきます。

本県がひとり親を支援する様々な取組みを行っておられ、その取組によって、ひとり親の方々の就労や子どもたちの進学などにおいて一定の成果を上げてこられた、大変にご努力されてこられたということは承知しております。

 しかしながら、国全体の雇用環境の悪化などの事情があるにせよ、本県の長年の取組みにもかかわらず、先に述べましたように、ひとり親家庭の状況は、一向に改善されていない、むしろ悪くなってきています。したがって、総合的にみると、これまでの本県の取組みは、やはり不十分であった、あるいは支援制度が知られていなかったり利用しづらいなど不適切であったと評価せざるを得ないことを指摘させていただきます。

今後は国と連携した支援の強化が必要です。先月、8月29日の閣議で、経済的に厳しい家庭の子どもの教育や生活を支援するため、「子どもの貧困対策大綱」が決定されました。当初検討されていた、返済義務のない「給付型奨学金」が創設されなかったこと、数値目標が盛り込まれなかったことなど、大変残念でなりませんが、貧困率など25項目の統計データを「指標」に設定したことは評価できると考えます。

子どもの貧困対策については、本年2月に一般質問いたしました際、小川知事より「県といたしましては、国の大綱を踏まえて、福岡県における子どもの貧困対策の計画を策定し、これまでの取組みを初め、支援策の充実強化を図ってまいります」という心強いご答弁をいただきました。

我が国では子どもの6人に1人が貧困状態にあり、本県でも4人に1人の子どもが就学援助を受けているという現状を踏まえますと、ひとり親家庭の子ども、障がいをもつ子ども、社会的擁護を受けている子どもなど、厳しい状況にある子どもに対する施策を最優先すべきであり、このことが何よりも県民の皆様の幸福度を高めることにつながると考えます。小川知事におかれましては、財源確保、非正規労働者の処遇改善、最低賃金アップ、養育費徴収制度の改正などを含め、必要な施策をしっかりと国に対してご要望いただくと同時に、数値目標を設定し、ひとり親家庭の状況や子どもの貧困が着実に改善される、実効性のある計画を早期に策定いただきますよう、重ねて強く要望し、私の質問を終わります。

 


[1] http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail02_3458_all.html

[2] ひとり親家庭の就労率は86%、OECD加盟国平均は65%

[3] 中嶋裕子「子どもをめぐる貧困と虐待~イギリスの施策から学ぶ~」『社会事業研究』 (51), 128-132, 2012

[4]福岡県全体の母子家庭の数は、(平成18年)の6万9千世帯から、平成23年の7万5千世帯へと、5年で8%増加。この間、父子世帯の数は、1万1千世帯から1万世帯へと8%の減。

[5]『福岡県母子世帯等実態報告書』(平成23年11月1日現在)平成24年3月、111頁

[6]同上書、22頁

[7]同上書による推計値。養育費の額がきまっている世帯の年間額185.233円(521.784円×35.5/100)を母子世帯で割った場合。6.7

[8]公益社団法人「家族問題情報センター」が、厚生労働省の委託事業として設置している「養育費相談支援センター」が実施した、ひとり親家庭の相談者からの聴き取りによる。http://www.youikuhi-soudan.jp/pdf/Problems.pdf

[9] リチャード・ウィルキンソン、ケイト・ビケット『平等社会~経済成長に代わる、次の目標』東洋経済新報社、2010年

山田昌弘『希望格差社会~「負け組」の絶望感が日本を引き裂く』筑摩書房、2004年

|

« 「インクルーシブ教育の推進について」質問しました。  | トップページ | 12月議会でも多言語サービスについて一般質問しました! »