子どもの貧困対策について、一般質問しました。
平成26年3月7日一般質問
子どもの貧困対策について
堤かなめ
皆さま、こんにちは。民主党・県政クラブ県議団の堤かなめでございます。子どもの貧困対策について質問いたします。
昨年6月、衆議院、参議院ともに全会一致で「子どもの貧困対策の推進に関する法律」、通称「子どもの貧困対策法」が可決され、本年1月17日に施行されました。
この法律は、子どもの将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう、貧困の状況にある子どもが健やかに育成される環境を整備するとともに、教育の機会均等を図るため、子どもの貧困対策を総合的に推進することを目的としています。
この法律が成立した背景として指摘されているのが、我が国の18才未満の子どもの相対的貧困率の高さです。1985年の11%から、2009年の16%へと、多少の増減はあるものの、すでに20年以上にわたって上昇しつづけ、近年さらに高まる傾向にあるとのことです。国際的にみても、ユニセフの調査によれば、先進35カ国中で、日本は「子どもの貧困ワースト9位」となっています。
イギリス政府が2020年までに、子どもの相対的貧困率を10%に、絶対的貧困率を5%にまで削減するといった政策目標値を掲げるなど、先進諸国で子どもの貧困を撲滅するための取り組みが広がってきていることも今回の法律制定の背景の一つとされています。
1 本県における「子どもの貧困」
さて本県でも、子どもの貧困は深刻です。経済的に困窮した家庭に給食費などの費用を補助する就学援助を受けている小中学生の割合は、2003年(平成15年)の16%から毎年増えつづけており、子どもの貧困が広がってきています。直近の2012年度(平成24年度)の統計では、23%と、小中学生の約4人に1人が就学援助を受けています。
貧困のなかで生まれ育った子どもは、もちろん例外はありますが統計的にみると、学力や学歴が低いリスク、健康状態が悪いリスク、大人になってからも貧困でありつづけるリスクが、そうでない子どもよりも高いことがわかっています。また、成人となってからの賃金や生産性を低くするため、社会や経済全体にも大きな損失となると言われています[1]。
そこで、まず、小川知事にお伺いします。子どもの貧困は、その社会的インパクトという点からも、最も優先的に取り組まねばならない課題であると考えますが、知事はこのような福岡県の「子どもの貧困」の状況を踏まえ、「子どもの貧困」についてどのように認識しているのか、また今後の取組みについて知事のご見解をお聞かせください。
2 乳幼児期の子どもの支援
次に、乳幼児期の子どもの支援についてです。
子ども期のなかでも、貧困が後の人生に最も大きな影響を与えるのが就学前の乳幼児期だとされています。日本の保育所は、子どもの発達のチェック、健康や生活問題の早期発見、栄養の改善、知的・情緒的発達の促進、コミュニケーション・スキルの促進など、貧困世帯が抱えがちなさまざまな不足を緩和するサービスを提供してきました。また、保育所の素晴らしいところは、「貧困世帯の子ども用」ではなく、あらゆる所得階層の子どもたちに対する普遍的なサービスでありながら、特別の配慮が必要な子どもたちを支援することが可能となっている点です[2]。
2008年(平成20年)4月に改訂された厚生労働省による「保育所保育指針解説書」では、保育士がソーシャルワーク的な機能をもつことが必要であるとされています。しかし、特に私立の保育所においては、保育士の勤続年数が短く、ソーシャルワーク的な役割を果たすに十分な経験を積んだ保育士が少ない状況にあります。
そこで、保育所が子育て家庭の支援という役割を十分果たすためには、保護者が抱える子育てに関する課題について相談に応じ、助言できる専門性や経験をもつ保育士を確保できるよう、職員配置や処遇の改善、研修の充実が必要と考えますが、知事のお考えをお聞きします。
3 小中学生への就学援助制度
3つ目に、小中学生への就学援助制度について2点お聞きします。
就学援助費は、先ほど述べましたように経済的に困窮した家庭の小中学生を支えるという大きな役割をもつもので、現時点では、我が国の子どもの貧困対策の柱と言えるものです。
就学援助費は、生活保護を受ける「要保護世帯」と、生活保護世帯に近い状態と市町村が認定する「準要保護世帯」に支給されますが、この「準要保護世帯」の認定基準が市町村によって異なることが問題となっています[3]。いわゆる「三位一体改革」により、2005年度から「準要保護世帯」への国庫補助が廃止され、財政難や取組姿勢の違いなどから、基準を厳しくする自治体が出てきたことで、このような市町村格差が広がってきました。
たとえば、「準要保護世帯」と認定される基準は、福岡市では年収約400万円以下ですが、県内で基準が最も厳しい所では年収約210万円以下と、大きく異なっています。これでは、「住む地域によって子どもに不平等が生じるのはおかしい」という声が出てくるのも当然です。
そこで、1点目に、市町村による認定基準の違いによる就学援助費の支給格差を生まないよう、国に対して十分な財政措置を求めるなど行うべきと考えますが、杉光教育長のお考えをお聞きします。
2点目に、就学援助制度の周知についてです[4]。
就学援助は、保護者からの申請がなければ支給されない、いわゆる「申請主義」となっています。情報がきちんと届いていなければ、当然、申請する人は少なくなります。
全国的には、すべての児童生徒に「就学援助申請書」を配布している市町村も多いと聞いていますが、本県では6カ所にとどまっており、多くは希望者のみへの配布となっているのが現状です。また、本県では、教職員向けに就学援助に関する説明会を行っている市町村も、わずか3カ所。ほとんどの市町村で行われていません。
つまり、本県では、周知の徹底がはかられておらず、援助を受けるべき子どもが援助を受けていない、かなりの子どもたちがセーフティネットから漏れてしまっているのではないかと懸念されます。
たしかに本県でも、大半の市町村が、ホームページや広報誌に情報を掲載したり、各学校に文書で周知しているようですが、はたして一人ひとりの教職員や保護者にきちんと情報が届いるかは疑問です。
福祉の現場では、一般に「援助を必要とする世帯ほど情報が届きにくい」ことが知られています。援助が必要な世帯ほど、情報にアクセスするための時間も精神的な余裕もなく、情報を集ようとする力まで奪われてしまいがちだからです。そのような場合に、大きな役割を果たすのは、やはり先生方です。子どもたちの家庭の経済状況の変化などに真っ先に気づくのは、担任や養護などの先生方ではないでしょうか。新しく採用される教職員も増え、制度自体を知らないという先生もおられるため、教職員への周知はますます重要となってきています。
そこで、2点目に、本県でも、教職員や保護者を対象とする説明会や、「就学援助申請書」を全員に配布し、申請の有無の回答を入れた封書を全員から回収するなど、確実に就学援助制度が浸透するための方法を配慮ある形で行うよう、市町村教育委員会に働きかけるべきと考えますが、教育長の考えをお聞きします。
4 高校生への「高校就学支援金」および「奨学給付金」
最後に、高校生への「高校就学支援金」および「奨学給付金」についてです。
来年度4月から、いわゆる「高校無償化」へ所得制限が導入され、新しい制度として「高校就学支援金」と「奨学給付金」が創設されました。
先月は、中学3年生が、どの高校を受験するか、高校に進学するかそれとも就職を選ぶかなど、進路を決める大事な時期でした。経済的に厳しい世帯では、支援を受けられるのか、どのくらいの額が支給されるのかによって、進路が変わってくる可能性もあります。学校には、保護者から「一体どうなるのですか?」という問い合わせも多く寄せられたと聞いております。
私も書類を読ませていただきましたが、とても複雑で驚きました。たとえば、「就学支援金」の所得基準は910万円が目安とされていますが、実際には保護者の市区町村民税所得割額の合算が30万4200円で、所得を証明する書類を見なければわかりません。「奨学給付金」は、第1子の高校生等がいるか、23歳未満の扶養されている姉や兄がいるか、高校が国公立か私立なのかなどによって額が変わってきます。このような複雑な制度への急な変更は、保護者や現場の教職員の皆さんにとって、大きな負担となりかねません。
そこで、教育長に2点お聞きします。
1点目に、制度が始まってすでに60年以上が経つ小中学校の就学援助制度にもまして、この春新しく導入される、高校生を対象とする「就学支援金」と「奨学給付金」については、教職員や保護者に対して丁寧な説明が必要と考えますが、説明がどのように行われたのかについてお聞きします。
2点目に、これらの新しい制度の導入にともない、今後も毎年その事務処理等のために学校現場にかなりの事務量が生じると思われますが、円滑な導入に向けてどのように取り組むのか、また負担軽減にどのように取り組むのか、お聞きします。
以上、知事および教育長の明確で誠意あるお答えをお願いいたします。
【知事の答弁】
子どもの将来が生まれ育った環境により左右されることは決してあってはならない。本県においては、経済的な問題で生徒が進学を断念することのないよう、就学金事業な実施してきた。更に今年度からは、ご指摘の状況を踏まえ、貧困の連鎖を招かぬよう、乳幼児期の子ども、ひとり親家庭の小中学生及び生活保護受給世帯の中学生を対象にした生活習慣の取得、学習支援などの事業に取り組んでいる。本年1月に施行された「子どもの貧困対策の推進に関する法律」に基づき、政府は、子どもの貧困対策を総合的に推進するための大綱を定める。県としては、国の大綱を踏まえ、福岡県における貧困対策計画を策定し、支援策を強化してまいりたい。
保育所は、地域における最も身近な児童福祉施設として、保育所に入所している子どもの保護者はもとより、地域の子育て家庭に対する支援を行う役割を担っており、保育士には、高い専門性や豊富な経験が求められている。このため、県では、保育所運営費の算定にあたって、保育士の勤続年数を加味して交付するとともに、来年度からは、保育士の処遇改善に取り組む保育所に対し、改善費用も支援しているところである。また、保育士に対し、新任や主任、所長などの階層別研修、障がい児保育や児童虐待防止などの専門研修を実施し、子育て支援に関する知識や技術の向上を図っているところである。なお、国においては、平成27年度から実施が予定されている「子ども・子育て支援新制度」に向け、職員配置や処遇改善を含め、詳細な制度設計が進められている。県では、保育士の研修についても、更なる充実に努めてまいる。
県教育委員会では、毎年、国に対して、全国都道府県教育委員長及び教育長協議会を通じて、市町村が必要な就学援助を行えるよう、対象児童生徒数に見合った十分な財政措置を講ずるよう、要望を行っている。今後とも、引き続き国に対して、就学援助の充実のための十分な財政措置を要望していく。
就学援助制度を浸透させるための方策として、県教育委員会では、毎年、市町村教育委員会に対して、できるだけ多くの広報手段を通じて、保護者に就学援助の趣旨および申請手続きについて周知徹底を図るよう、通知している。
今後は、通知の中で、教職員及び保護者向け説明会の開催や全児童生徒の保護者に対する申請書の配布など、具体的な周知方法を例示し、就学援助制度が浸透するための方策を推進するよう、市町村教育委員会に働きかけていく。
就学支援金と奨学給付金に関する説明については、今回の制度改正に伴い、中学生や保護者が不安を抱くことなく適切な進路選択を行うためには、改正内容をできる限り早期に周知することが重要であると認識している。このため、中学3年生全員へのリーフレット配布のほか、県立高校や市町村教育委員会を対象とした説明会を通じて、教職員や生徒、保護者への周知を図ってきたところである。さらに今後、各県立高校において、入学予定の生徒及び保護者を対象に、制度や事務手続きについて、直接詳細な説明を行う予定である。
新制度の導入に伴う所得確認等の業務により、事務量の一時的な増が予測されるものの、現有の人員で対応可能であると考えている。今後は各学校における事務処理の状況等を確認した上で、臨時職員の配置など対応の必要性を検討していきたいと考えているところである。
【要望】
知事・教育長よりご答弁いただきました。子どもたちが安心して教育を受けられる環境を整えることは、教育格差を媒介とする「貧困の連鎖」に歯止めをかけることになるという認識には異論のないものと考えます。まずは、現行の制度を100%活用して子どもたちを支援することで、「子どもの貧困対策」の着実な第一歩としていただきたいと思います。
その上で、福岡県の子どもの貧困が深刻化するなか、県民幸福度日本一を目指す小川知事には、日本一実効性のある計画を早期に定め、本県から「子どもの貧困」を一日も早く撲滅してくださいますようお願い申し上げ、質問を終わらせていただきます。
以上
*正式な議事録は後日県議会HPにアップされます。(下線部は堤による。)
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