9月定例会にて図書館について質問しました。
9月26日に、図書館の振興について質問しました。内容は次のとおりです。恐縮ですが、答弁については、県議会HPをご参照ください。(10月中旬位には検索できるようになっていると思います。)
今回は、県立図書館についての質問を中心にいたしました。学校図書館や市町村図書館については、改めて質問したいと思っています。
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皆さま、こんにちは。民主党・県政クラブ県議団の堤かなめです。図書館の振興につきまして、質問いたします。
1.図書館の可能性と役割
はじめに、図書館の可能性と役割についてです 。
図書館は、単に本を借りるだけの場所ではなく、もっと多様な可能性と役割をもっています。国内外の図書館について調べていくうち、図書館の重要な役割の1つが、過去の人類の偉業を、後世へと、受け継ぐことである、とわかってきました。
産業やビジネス、科学、芸術、文化など様々な分野で、新しい発想やアイデアを生むには、まず先人に学ぶこと、適切な「過去との対話」が必要です 。そして、図書館は、そのような先人たちの業績をストックし、万民に提供する役割を世界中で果たしてきたのです。
「巨人の肩の上に立つ(Standing on the shoulders of the giants) 」という格言があります。これは、万有引力を発見したアイザック・ニュートンの言葉、「他の人よりも遠くが見えているとすれば、それは私が偉大な巨人の肩の上に立っているからです」によって、有名となったものです 。科学的発見は、まったくの無から突然ひらめくものではありません。過去の研究成果のすべてに目を通し、自分のものとする・・・そうやってまず巨人の肩の高さまで到達する・・・その肩の上に立つと、目の前に新たなる地平が開けてくる・・・そして、その上に自分のオリジナリティを加味することができれば、先人を凌ぐような発見や発想も可能となります。
こうした方法は、なにも科学やアカデミズムの分野だけではなく、産業やビジネスも同じです。ニューヨーク公共図書館 は、産業の「孵化器」「インキュベーター」としての役割を果たしてきました。コピー機で世界的に有名な、ゼロックスの創業者、チェスター・カールソンは、弁護士時代に、ニューヨーク公共図書館に毎晩通いつめました。そして、ある晩、物理学者の論文に「ある種のものに光を当てれば電気の伝導性を増加させる」というくだりがあるのを見つけました。これをヒントに実験を重ね、世界初の電子複写機を開発したと言います。
パン・アメリカン航空の創設者もしかり。鉄道、船舶などの資料を図書館で集め、速度から運送事情までを徹底的に調べ上げるうち、「空こそ次世代を担う」と確信した、とのことです。
ニューヨーク公共図書館の設立は、19世紀半ばにさかのぼります。新興都市であったニューヨークの知的リーダーたちは、パリやロンドンなど歴史あるヨーロッパの諸都市に引けをとらない、文化的な都市にするためには、図書館の充実が不可欠だと考えました。なぜなら、文化を育むには、市民ひとりひとりが学ぶことを通して、自らを高めることが肝要であり、そのためには、貧富の差なく、誰もが自由に学べる環境を整備しなければならないからです 。
イタリアのボローニャは、フェラーリやドゥカーティといった、高性能の自動車やオートバイを生み出した工業都市です。パッケージバレーとも呼ばれ、食料品や薬品などの包装機械でも有名です。ボローニャ市の人口は、38万人に過ぎませんが、73もの図書館を有しています 。
このようにして見ていくと、ビジネス支援や社会教育の場として、図書館の役割は極めて大きく、無限の可能性を秘めていることがわかります。そこで、まず図書館の役割と可能性につきましてどのように認識しておられるのか、小川知事にお尋ねします。
では、ひるがえって、福岡県では、県立図書館がこのような役割を果たしていると言えるでしょうか。
何人かの友人に「県立図書館に行ったことある?」と聞いてみました。その答えは・・・「県立図書館?・・・どこ?」、「百道浜に立派なのがあるよね~あれのこと?」・・・・・・残念ですが、百道浜の福岡市立総合図書館に比べると、箱崎にある県立図書館は存在感が薄いようです。そこで、福岡県立図書館が現在どのような機能を果たしているのかについて、杉光教育長にご所見をお尋ねします。
2.福岡県立図書館の現状と課題
次に、福岡県立図書館の現状と課題について5点お聞きします
1)県立図書館の利用状況について
1点目に、現在の県立図書館の利用状況についてです。わが会派の川崎俊丸議員が平成22年12月定例会で質問し、全国の47都道府県立図書館と比較した場合の福岡県立図書館の順位について、一般会計の歳出に占める図書資料費の比率40位、県民一人当たり蔵書数44位、資料費40位、貸し出し数同じく40位と、いずれも全国で非常に低い位置にあることを指摘しました。
川崎議員の質問からまだ2年足らずしかたっておらず、これらの指標に大きな変化はありません。そこで、県立図書館の利用状況の一端を示すものである、蔵書数、貸出冊数、年間入館者数、レファレンス件数につきまして、この5年間の推移と、今後の取り組みについて教育長にお尋ねします。
2)ソフト面(県民サービス)の充実
2点目にソフト面の充実についてです。
福岡県立図書館では、平成15年にビジネス支援情報コーナーの設置、平成21年に情報提供システムの更新、平成22年に在架予約サービス、および遠隔地貸出・返却サービスの本格実施など、この間、館長はじめ職員の方々のご努力により、時代のニーズに合わせるべく、ソフト面での充実が図られてきたことは評価に値すると考えます。
また、県立図書館には力強い応援団がついています。録音図書製作ボランティア「音訳の会」、布の絵本制作ボランティア「ゆずりはの会」、ブックトークボランティア「本の楽しさおとどけ便」など、県民サービスの充実を支えてこられたボランティアの皆さまにも、敬意を表したいと存じます。
しかしながら、ネットワーク化の進展には課題もあるように思います。同じく平成22年の川崎議員の質問に対し、教育長は「市町村立図書館を初めとして公民館図書室、学校図書館、九州大学を初めとする大学附属図書館等と相互貸借を行い、図書館間の連携、協力を促進しております。また、福岡県図書館情報ネットワークで、図書館を設置しております、すべての市町村とインターネットを通じてネットワークを形成しているところでございます。」とお答えになっています。そこで、教育長にお尋ねします。ネットワーク化に関して、現在の進捗状況および今後の取り組みについてお聞かせ下さい。
もう一つ課題が残されています。本の世界では、誰もが、時空を超越することができます。「読書をしている時は身の不自由を忘れる」とも言われ 、障がい者、高齢者など、いわゆる情報弱者の方々にとって図書館はとりわけ大切な場所です。特に、視覚に障がいのある方については、点字やデイジーデータをはじめ総合的な情報の提供を行う「サピエ」によるサービスが始まっています。そこで、視覚障がい者も等しくサービスを受けられるよう県立図書館は、県内の情報ユニバーサルサービスの拠点として、今後どのような取り組みを考えておられるのか、教育長にお尋ねします。
3)職員体制の充実
3点目に職員体制の充実についてです。専任職員1人当たりのサービス人口は、兵庫県に次いで二番目に多くなっています 。すなわち、福岡県では、県民の人口規模に対して、図書館業務に専門で携わる職員が非常に少ない、ということです。これは、福岡県が他県に比べ、効率的に県民サービスを行っているとみることもできますが、職員に過度に負担がかかっているという可能性もあります。
実際に、平成19年度から23年度までの間に、一般の貸し出し冊数や郷土資料のレファレンス数が約2倍となるなど、業務内容は確実に増えています。しかし、この間、職員数は、正規職員33人、嘱託20人、計53人のまま増員されていません。
先に述べましたように、ビジネス支援や社会教育の場としての図書館の可能性を十分に生かすには、また、ユニバーサルサービスを充実するなど、県民サービスをさらに向上するには、なによりも雇用の安定性の確保、業務内容に見合った数の職員と優れた人材が必要です。
さらに、県立図書館は、「図書館の中の図書館」として、県内の市町村図書館や学校図書館の運営について助言したり、県内の図書館の運営を担う人材を育成するなど、大変重要な役割も担っています。専門職員には、最新の情報技術や情報ニーズを把握する能力、社会の変化に適合的な情報の収集や編集能力、さらには企画力、ネットワーク力などが求められます。
そこで、教育長にお尋ねします。司書資格を有する職員の配置など、職員体制の充実につきましてお考えをお聞かせください。
4)ハード面(施設面)の課題
4点目にハード面の課題についてです。東京都日比谷区立図書館、大分県立図書館など、国内にも次々と、明るく開放的で洗練されたデザインの図書館が誕生しています。それに引き替え、われらが県立図書館は、竣工から約30年が経ち、雨漏り、壁のシミやカーペットの色褪せなど、全体に古びた印象は否めません。どんなにソフト面で頑張っても、ハード面の不備や、建物自体の魅力のなさが、知名度の低迷や存在感の薄さにつながっているのは明らかです。
書庫も足りません。現在の占有率は92%です。また、公共交通機関での来館が難しい、障がい者、高齢者、子ども連れの利用者のためには、駐車場の確保が必要ですが、車椅子の方などのための「まごころ駐車場」2台分を含め、駐車スペースは19台分しかありません。
そこで、教育長にお尋ねします。福岡県立図書館の老朽化や狭隘化といったハード面、施設面の課題について、どのようにお考えでしょうか、ご所見をお聞かせください。
5)本県図書館行政における県立図書館の在り方
5点目に、本県図書館行政における県立図書館の在り方についてです。
図書館は、「知的インフラ」とも言われます。重化学工業を基軸とする工業社会から、ソフト産業を基軸とする知識社会へと移行しつつある今日、道路や橋や港のような従来型のインフラ以上に、「知的インフラ」の重要性が増しています。したがって、「知的インフラ」としての図書館のもつ、新たな可能性について、正しく認識した上で、その役割を再定義するなど、時代の変化に合った図書館行政が求められていると考えます。
そこで、最後に、本県図書館行政における県立図書館の在り方について、教育長にお考えをお尋ねし、私の質問を終わります。ご清聴有難うございました。
<要望>
ご答弁をいただき、県立図書館の役割については十分認識しておられることがわかりました。しかし、まだ福岡県は図書館のもつ可能性を十分に生かしきれていないように思います。今後の展開を、県民の皆さまと共に、期待をもって見守っていきたいと思いますが、中・長期的な図書館の振興について、2点要望させていただきます。
1点目に、図書館利用共通カードの導入についてです。
皆さまご承知のように、IC乗車券については、JR九州の「スゴカ」、西鉄の「ニモカ」、福岡市交通局の「はやかけん」の3つが統合され、公共交通機関が格段に利用しやすくなりました。
図書館利用カードについても、県内の市町村図書館や学校図書館など、あらゆる図書館を利用できる共通カードに統合することができれば、県民の皆さんの利便性が高まるのではないでしょうか。図書館間の相互貸借などの管理も容易となり、職員の事務作業の軽減につながる可能性もあります。
実際に、スイスでは、「ビブリオパス(BibliOpass)」と呼ばれる一つのカードで、スイス国内の約600の図書館の本を自由に借りることができるそうです 。日本では福岡県がまず図書館利用共通カード導入の先鞭をつけてくださいますよう、ぜひともご検討願います。
2点目に、国立国会図書館「九州館」の誘致についてです。
東京都千代田区永田町に所在する、国立国会図書館「東京本館」における蔵書の収容能力が限界に近づいているということもあり、国立国会図書館「関西館」が、2002年、京都府に開館いたしました。この「関西館」は、高度情報化社会に対応した「電子図書館」の機能を有し、建物は日本建築学会賞を受賞するなど、高く評価されているようです。
きたるべき道州制を見据えた、九州の「知の拠点」として、国や福岡市、北九州市、経済界などと協議しつつ、国立国会図書館「九州館」を誘致することも、検討に値すると考えます。候補地の一つとしては、福岡市東区の九州大学箱崎キャンパス跡地が挙げられます。ここに、首都機能を補完する、バックアップセンターを誘致する、という構想もあると聞きます。万が一、南海トラフ巨大地震が起きたとしても、福岡県は地震や津波の被害が比較的小さいと想定されており、バックアップセンターに指定される可能性は、十分あります。国立国会図書館「九州館」が誘致できれば、首都機能の重要な一つである、「情報システム・データのバックアップ施設」としての役割も果たすことができるのではないか、と考えます。
アメリカのシアトル、オランダのデルフト、スウェーデンのストックホルム、エジプトのアレキサンドリア・・・世界各地で、「文化の高さ」を示す象徴として、最先端の情報技術を導入した、図書館づくりが進んでいます。無線LANなどPC環境の整備はもちろん、ホールや展示室、カフェやレストランを併設し、集客力のある魅力的な施設として、観光スポットにもなっています。この様な、新しいタイプの図書館をつくるには、ある程度以上の敷地面積が必要であり、九州大学箱崎キャンパス跡地などは、これらを実現する好機ではないか、と感じております。
跡地の面積は、ヤフードームの約6倍。敷地内には、レンガ造りの建物や倉田謙設計の有名な建築が深い緑に囲まれて点在しています。このような歴史的建築を保存改築すれば、趣のある素晴らしい図書館や美術館となるはずです。福岡市中央区須崎に所在する、老朽化が進んでいる福岡県立美術館も併せて、こちらに移転すれば、総合的な文化施設として集客力も高まるでしょう。
最後に、知識情報経済という21世紀型の社会を支える「未来の図書館」に向け、小川知事、教育長はじめ関係者の皆さまの英知とお力を結集してくださいますようお願いいたしまして、降壇させていただきます。有難うございました。
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